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AIアプリケーションにおけるベクトルデータベースの活用法:類似検索とRAGの実現

はじめに

近年のAI、特に大規模言語モデル(LLM)の進化に伴い、「ベクトルデータベース(Vector Database)」が注目を集めています。ベクトルデータベースは、テキスト、画像、音声などを「ベクトル埋め込み(Vector Embedding)」と呼ばれる数値の配列として格納し、その類似性に基づいて高速に検索することに特化したデータベースです。

本記事では、ベクトルデータベースの基本から、その最も重要な応用例であるセマンティック検索とRAG(Retrieval-Augmented Generation)について解説します。

1. ベクトル埋め込みとは?

ベクトル埋め込みは、非構造化データ(テキストなど)の意味的な特徴を捉え、高次元のベクトル空間における一点として表現する技術です。例えば、"犬"と"わんこ"は異なる単語ですが、意味が近いため、ベクトル空間上では非常に近い位置にプロットされます。

このベクトルを生成するのが、Sentence TransformersやOpenAIのEmbedding APIのような「エンコーディングモデル」です。

python
from sentence_transformers import SentenceTransformer

# エンコーディングモデルの読み込み
model = SentenceTransformer('all-MiniLM-L6-v2')

sentences = [
    "犬が公園を散歩している。",
    "猫が窓辺で日向ぼっこをしている。",
    "うちのポチは元気な男の子です。"
]

# 文章をベクトルに変換
embeddings = model.encode(sentences)

print(embeddings.shape)
# (3, 384) -> 3つの文章がそれぞれ384次元のベクトルで表現された

2. ベクトルデータベースの役割

数個のベクトルなら単純なコサイン類似度計算で済みますが、数百万、数億のベクトルの中から類似のものを高速に見つけ出すのは困難です。ベクトルデータベースは、この問題を解決します。

主要な機能

  • 効率的な保存: 大量の高次元ベクトルデータを効率的に保存します。
  • 高速な類似検索: ANN(Approximate Nearest Neighbor / 近似最近傍)アルゴリズム(例: HNSW, LSH, IVF)を用いて、膨大なデータの中から類似ベクトルをミリ秒単位で検索します。
  • スケーラビリティ: データの増加に応じてスケールアウトできるように設計されています。
  • メタデータフィルタリング: ベクトル検索と同時に、付随するメタデータ(例: 商品カテゴリ、作成日)での絞り込みが可能です。

代表的なベクトルデータベース

  • マネージドサービス: Pinecone, Zilliz Cloud, Weaviate
  • オープンソースライブラリ: Faiss (by Meta), Annoy (by Spotify), ScaNN (by Google)
  • セルフホスト可能なDB: Chroma, Qdrant, Milvus

3. 応用例1:セマンティック検索

従来のキーワード検索では、「PC おすすめ」と「ラップトップ 比較」は別のクエリとして扱われます。一方、ベクトル埋め込みを利用したセマンティック検索(意味検索)では、単語の一致ではなく、クエリの「意図」や「意味」に基づいて検索が行われます。

仕組み:

  1. インデックス作成: ドキュメント群をすべてベクトル化し、ベクトルデータベースに格納します。
  2. 検索: ユーザーからの検索クエリを同じエンコーディングモデルでベクトル化します。
  3. 類似度計算: クエリベクトルとデータベース内の全ベクトルとの類似度を計算し、類似度が高い順に結果を返します。

これにより、ユーザーはより自然な言葉で、意図に沿った検索結果を得ることができます。

4. 応用例2:RAG (Retrieval-Augmented Generation)

RAGは、LLMの弱点である「ハルシネーション(事実に基づかない情報の生成)」や「知識の陳腐化」を補うための強力な技術です。

仕組み:

  1. Retrieval (検索): ユーザーの質問が入力されると、まずその質問に関連する情報をベクトルデータベースから検索します(セマンティック検索の応用)。
  2. Augmented (拡張): 検索して得られた関連情報を、元の質問と一緒にプロンプトに含めます。
  3. Generation (生成): 拡張されたプロンプトをLLMに与え、回答を生成させます。LLMは提供されたコンテキスト(検索結果)に基づいて回答するため、より正確で信頼性の高い出力を得られます。

RAGの擬似コード:

python
def answer_with_rag(question: str, vector_db, llm):
    # 1. 質問をベクトル化し、関連情報を検索
    question_embedding = model.encode(question)
    relevant_docs = vector_db.search(query_vector=question_embedding, k=3)

    # 2. プロンプトを拡張
    prompt = f"""
    以下の情報に基づいて、質問に答えてください。
    情報:
    - {relevant_docs[0].text}
    - {relevant_docs[1].text}
    - {relevant_docs[2].text}

    質問: {question}
    """

    # 3. LLMで回答を生成
    answer = llm.generate(prompt)
    return answer

RAGは、社内ナレッジベースのQAボットや、最新情報に基づいたニュース解説チャットなど、幅広い応用が可能です。

まとめ

ベクトルデータベースは、非構造化データをAIが扱える形で整理し、活用するための基盤技術です。セマンティック検索による検索体験の向上や、RAGによるLLMの性能向上など、その応用範囲は多岐にわたります。

AIアプリケーションを開発するエンジニアにとって、ベクトルデータベースの仕組みと活用法を理解することは、今後ますます重要になるでしょう。

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