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PyTorch vs. TensorFlow:2024年版 詳細比較とユースケース別使い分け

はじめに

深層学習の領域において、PyTorchとTensorFlowは長年にわたり二大フレームワークとして君臨してきました。かつては「研究のPyTorch、本番のTensorFlow」と言われましたが、両者ともに進化を続け、その差は縮まりつつあります。

2024年現在、エンジニアはどちらのフレームワークを選択すべきでしょうか?本記事では、APIの使いやすさ、パフォーマンス、エコシステム、デバッグの容易さといった観点から、両者を徹底比較し、ユースケースに応じた選択基準を提示します。

1. APIと使いやすさ

PyTorch

  • Pythonicな設計: PyTorchのAPIは、NumPyに似た直感的でPythonらしい設計思想を持っています。オブジェクト指向のクラスとしてモデルを定義し、通常のPythonコードと同様にデバッグできます。
  • 動的計算グラフ (Define-by-Run): 計算グラフが実行時に構築されるため、柔軟性が高く、可変長の入力や再帰的なネットワーク構造を扱いやすいのが特徴です。デバッグもPythonのデバッガ(pdbなど)がそのまま使えて直感的です。
python
# PyTorchのモデル定義例
import torch.nn as nn

class SimpleNet(nn.Module):
    def __init__(self):
        super(SimpleNet, self).__init__()
        self.fc1 = nn.Linear(784, 128)
        self.relu = nn.ReLU()
        self.fc2 = nn.Linear(128, 10)

    def forward(self, x):
        x = self.fc1(x)
        x = self.relu(x)
        x = self.fc2(x)
        return x

TensorFlow

  • Keras APIの統合: 現在のTensorFlowでは、高レベルAPIであるKerasが標準となっています。これにより、モデルの構築、学習、評価が非常にシンプルになりました。
  • 静的計算グラフ (Define-and-Run): tf.functionデコレータを使うことで、Pythonコードから静的な計算グラフを構築します。これにより、グラフ全体の最適化が可能となり、パフォーマンス面で有利になることがあります。ただし、デバッグは少し煩雑になる傾向があります。
python
# TensorFlow (Keras) のモデル定義例
import tensorflow as tf
from tensorflow.keras import layers, models

def create_simple_net():
    model = models.Sequential([
        layers.Dense(128, activation='relu', input_shape=(784,)),
        layers.Dense(10)
    ])
    return model

結論: シンプルさやPythonとの親和性を重視するならPyTorch、Kerasの抽象化されたAPIに慣れているならTensorFlowが書きやすいと感じるでしょう。

2. パフォーマンス

パフォーマンスは、使用するハードウェア、モデルの構造、そして最適化手法に大きく依存します。

  • PyTorch: PyTorch 2.0で導入されたtorch.compile()は、モデルコードを最適化されたカーネルにコンパイルすることで、学習と推論を大幅に高速化します。
  • TensorFlow: TensorFlowは、XLA (Accelerated Linear Algebra) コンパイラを利用してグラフを最適化し、高いパフォーマンスを発揮します。特にTPU(Tensor Processing Unit)での性能は圧倒的です。

結論: 一般的なGPU環境では両者の性能差は縮まっています。TPUを使いたい場合はTensorFlowが唯一の選択肢となります。torch.compileの登場により、PyTorchも最適化の恩恵を受けやすくなりました。

3. エコシステムとデプロイ

TensorFlow

長年にわたり「本番環境に強い」とされてきただけあり、デプロイ関連のエコシステムが非常に充実しています。

  • TensorFlow Serving: 推論用に最適化された高性能なサーバー。
  • TensorFlow Lite (TFLite): モバイルや組み込みデバイス向けの軽量なライブラリ。
  • TensorFlow.js (TF.js): ブラウザ上でモデルを実行するためのライブラリ。
  • TensorFlow Extended (TFX): パイプラインの構築からモデルの管理、サービングまで、MLOps全体をカバーする包括的なプラットフォーム。

PyTorch

研究分野での成功を背景に、本番環境向けのエコシステムも急速に整備されています。

  • TorchServe: AWSと共同開発されたモデルサービングライブラリ。
  • PyTorch Live: モバイルデバイス上でリアルタイムなAI体験を構築するためのツール。
  • ONNX (Open Neural Network Exchange): PyTorchで学習したモデルをONNX形式にエクスポートし、TensorRTなどの推論エンジンで高速化するワークフローが一般的です。

結論: エンドツーエンドのMLOpsパイプラインを単一のフレームワークで構築したい場合はTensorFlowが依然として強力です。一方、柔軟なデプロイ戦略(例: ONNX経由)を好む場合はPyTorchでも全く問題ありません。

4. デバッグの容易さ

  • PyTorch: 動的グラフのおかげで、デバッグは非常に直感的です。print()文をモデルのforwardメソッド内に挿入したり、pdbのような標準的なPythonデバッガでブレークポイントを設定したりして、中間層のテンソルの状態を簡単に確認できます。
  • TensorFlow: tf.functionでコンパイルされたグラフの内部をデバッグするのは少しコツが必要です。tf.print()を使ったり、Eager Executionモードで実行したりする必要があります。

結論: デバッグのしやすさでは、PyTorchに軍配が上がります。

5. どちらを選ぶべきか?:ユースケース別ガイド

状況推奨理由
これから深層学習を学ぶ学生・研究者PyTorchPythonicで直感的なAPIは学習しやすく、最新論文の実装も豊富。
モバイル・WebアプリにAIを組み込みたいTensorFlowTFLiteやTF.jsといった専用ツールが成熟しており、導入が容易。
大規模な本番環境でMLOpsを構築したいTensorFlowTFXが提供するエンドツーエンドのパイプラインは強力。
最先端の研究やカスタムモデルを実装したいPyTorch柔軟な動的グラフが複雑なモデル構造の実装に適している。
Google Cloud (特にTPU) をメインで利用TensorFlowTPUとの親和性が非常に高く、最大限のパフォーマンスを引き出せる。

まとめ

PyTorchとTensorFlowの間のギャップは、年々小さくなっています。PyTorchは本番環境での利用が進み、TensorFlow(Keras)はより使いやすくなりました。

最終的な選択は、プロジェクトの要件、チームのスキルセット、そして個人の好みに依存します。もし迷ったら、まずはPyTorchから始めてみることをお勧めします。その直感的な設計は、深層学習のコンセプトを理解する上で大きな助けとなるでしょう。そして、必要に応じてTensorFlowのエコシステムを活用するというアプローチが、現代的な選択と言えるかもしれません。

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